野菜ソムリエ上級プロ堀基子の「島にんじんと沖縄伝統の滋養食チムシンジ」

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代表の野菜ソムリエ上級プロ堀基子です。
メンバーが3日おきにフレッシュな情報をお届けする、このメンバーブログを通じて、一人一人の得意分野や個性を知っていただけたらと存じます。

12月9日公開のこのブログで野菜ソムリエプロの當間好乃さんが島にんじんを紹介してくれました。その中で「チムシンジ」という料理名が登場していましたが、今回はその伝統的な郷土料理をご紹介したいと思います。

沖縄伝統の島野菜の中でも冬を代表する一つが島にんじんで、1月から3月にかけて旬を迎えます。その伝来や栄養価などについて詳しくは好乃さんが紹介してくれていますので、ぜひご参照いただければと思いますが、おなじみのオレンジ色の西洋にんじんの形状とは異なり、東洋にんじんの島にんじんは、直径は2cmほど、長さは30~40cmほどで、ごぼうのように細長い姿をしています。

オレンジ色の西洋にんじんがベータカロテンの宝庫であるのに対し、黄色の島にんじんはすぐれた抗酸化力で知られるキサントフィルという色素がたっぷり含まれています。100g当たりの島にんじんの栄養価をチェックすると、鉄分はほうれん草の2.0mgよりもよりも多く2.31mgも含まれており、ビタミンCは西洋にんじんの6mgの3.5倍に当たる21mgと意外なほど豊富に含まれています。また、にんじん特有の臭いが少なく、セリ科特有の爽やかな香りと、クセのない甘みのある味わいが魅力で、ソーキ(豚のあばら骨付き肉)汁など、昔ながらの汁物にも欠かせない存在です。

沖縄で島にんじんの料理といえば、豚肉やレバーと一緒に煮込む、伝統的な家庭料理である煎じ汁「チムシンジ(肝煎じの意)」です。沖縄では、医食同源の考え方のもと、食材をクスイムン(薬)ととらえ、薬効を求める汁物料理を「シンジムン(煎じ物の意味)」と呼びます。この「チムシンジ」も、沖縄の先人達が生み出した病中病後の滋養食で、現代の栄養学から見ても素晴らしいメニューであるといわれています。島にんじんに含まれるビタミンCが、島にんじんとレバーに豊富に含まれる鉄分の吸収をサポートしてくれるため、産前産後や授乳中の方、貧血が気になる方など、女性には特におすすめです。

チムシンジの作り方は、しっかりと血抜きした豚レバーと豚肉を一口大に切り、斜め薄切りにした島にんじんとともに鍋に入れ、水またはかつお出汁を加えて火にかけ、アクを取りながらコトコト煮て、塩やしょうゆで薄めに味を調えるだけ。お好みで、つぶしたにんにく、おろししょうがなどを加えたり、仕上げに青ねぎなどを散らします。滋味あふれる味わいで、身体がポカポカと温まり、力が湧いてくるように感じます。今日は木のお椀に盛りましたが、やちむんの汁マカイと呼ばれる器を使えば、より沖縄らしさを感じていただけると思います。

沖縄には「ヌチグスイ(命薬)」という言葉があります。現代でいう薬とは異なり、心と体を癒し、和ませてくれるものを意味します。愛情のこもった手料理、家族や友人と囲む美味しい食事、笑顔で酌み交わす楽しいお酒、心弾む踊りや音楽などの芸能文化、五感で満喫する豊かな自然……それもすべてヌチグスイなのだと思います。島にんじんをはじめとする沖縄伝統の島野菜、亜熱帯ならではのトロピカルフルーツも、もちろんすべてヌチグスイです。この冬、沖縄を訪れて、島にんじんに出逢えた方は、ぜひ「ヌチグスイ」という言葉を噛みしめながら、召し上がってみてくださいませね。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
次回もまたどうぞお楽しみに!

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