野菜ソムリエプロ當間好乃の「カラキ〜ヤンバルの先人に守られてきた希少な沖縄の野生種」

私の実家の中庭には、40年近くになるカラキ(オキナワニッケイ)があります。
外側から眺めると2本の大きな木が並んで立っている様に見えますが、根っこの方に目をやると確かに一本の木が根元から二つに分かれています。

このカラキは40年ほど前、山原(ヤンバル:沖縄本島北部)出身の母が、懐かしいだろうと故郷の友人から10cmほどの小さな一本のカラキの苗をわけてもらったものだそうです。
それが今では7-8mくらいはあるでしょうか?
台風の心配から、途中剪定もしたらしいのですがこの大きさです。
そのおかげで私は那覇に住んでいながらカラキが身近にあり、4-5mくらい離れた所を少しだけ掘って、髭根をおやつにかじったりもしていました。
お酒好きな方が多いヤンバルでは、このカラキの髭根を泡盛に漬けるカラキ酒が重宝がられたそうですよ。

さてこのカラキは地域名で、和名はオキナワニッケイといい、クスノキ科の常緑高木でシナモンの一種です。
ニッケイの名前は中国名の「肉桂」の音読みから来ています。
生薬名は桂皮といい頭痛、解熱、発汗、健胃等に効果があるとされています。

かつては中国雲南地方やベトナム・インドネシアが原産と考えられてきましたが、沖縄や徳之島にも野生種が見つかり学名が変更されました。
シナニッケイやセイロンニッケイ、そして沖縄の希少な野生種オキナワニッケイ。
何とも誇らしく愛おしく感じます。

一般にシナモンといえばその樹皮を乾燥させてスティック状にしたものや、粉末にしたものがスパイスとして紅茶やお菓子、料理などに使われていますね。
ヤンバルでは主に葉をお茶にしたり、子供がおやつがわりにかじったり、髭根は大事にカラキ酒にしたそう。
でも樹皮は使わなかったとのこと。
それは樹皮を剥がすと枯れてしまうからなのだそうです。
香りや味のより強い部分を贅沢に使うことより、カラキが枯れてしまわないようにすることの方を大事にして、カラキを守ってきたんですね。
今、私たちがオキナワニッケイに出会えるのは先人方のおかげなんですね。
ヤンバルの自然や先人の営みに、感謝の気持ちが自然と湧き上がってきます。
私もこんなふうに自然と関わっていきたいと考えさせられました。

今日は以前から気になっていたヤンバル産のカラキの葉を練り込んだ「笑味の麺」を茹でて冷麺にして頂きました。
思った以上にカラキの葉そのままの爽やかさがしっかり感じられ、葉の粉末を練り込んだことで食感も良く、食べ応えがありました。
多くの方にまず一度お試しになってみて欲しいと思う逸品でした。
お付け合わせは昨年漬けたクワンソウの花の甘酢漬けです。
今年はこれからクワンソウ摘みに行きます。
これも沖縄の小さな秋。

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